新しいスピードマスターは、既存のモデルに同じく、いわゆる第四世代に範を取ったデザインを持つ。仕上げも同じであり、ベゼルもセラミックスではなくアルミニウム製だ。ただし、いくつかのディテールが変更された。 既存モデルとの違いは以下の通り。
・タキメーターの90表記が、いわゆる「ドット・オーバー90(DON)」に変更
・ミニッツスケールが5刻みから3刻みに変更
・文字盤上のΩロゴが、プリントからアプライドに変更(ヘサライト製風防モデルを除く)
既存モデルとほぼ同じ文字盤。しかし12時位置のロゴがアプライドに変更されたほか、ミニッツインデックスの刻みが1/3秒刻みに改められた。文字盤に「MASTER CHRONOMETER」の表記を加えなかったのは、オメガの見識である。
・ベゼル上の TACHYMETRE 表記が拡大
歓迎すべき変更点はミニッツスケールが1/5秒刻みから1/3秒刻みに改められたこと。1万8000振動/時のムーブメントであれば、1/5秒刻みのミニッツスケールは計測時間を正しく表示できるが、2万1600振動/時だとずれが生じる。半世紀を経て、オメガはようやく訂正を加えた訳だ。
最も喜ぶべきは新しいブレスレットである
大きく重いスピードマスターは、お世辞にも装着感の良い時計とは言えなかった。加えて、中ゴマの大きく飛び出した弓管(オメガが言うところの「Tシェイプリンク」)は、ブレスレットの着け心地を悪化させた。対してCEOのアッシェリマンは19年の時点で、ブレスレットの改善を明言。以降リリースされたスピードマスターは、中ゴマの張り出しを抑えた「Uシェイプリンク」の弓管に変更されている。
この流れは新しいスピードマスターも例外ではなく、新しいブレスレットは中ゴマの張り出しを抑えたUシェイプリンクとなった。また、中ゴマの幅と長さが縮められたほか、おそらくは、ブレスレットのコマ数も増えているはずである。詳細は不明だが、この新しいブレスレットは、間違いなくスピードマスターの着け心地を改善するに違いない。合わせて、メタルブレスレットのクラスプは幅が15mm、レザーとナイロンストラップ用のデュプロイメントバックルは幅16mmと、既存のものに対してかなり細くされた。推測だが、新しいスピードマスターは、デスクワークの邪魔になりにくいかもしれない。
結論:オタクにも、そうでない人にも
時計好きにとっての永遠の定番であるスピードマスター。実物は未見のため断言はできないが、耐磁性能と精度を高めた新ムーブメントと、劇的に改善されたブレスレットはこのモデルの魅力を大きく高めた、と言えるだろう。とりわけ「プラ風防」を採用したふたつのモデルは、控えめな価格といい、ソリッドバックといい、マニア心をくすぐる要素に満ちている。少なくとも筆者にとって、新しいスピードマスターは必ず買うべきモデルのひとつとなった。これほど夢に満ちた実用時計は、ちょっと他にない。
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